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姿勢の科学

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カラダの芯と股関節

<カラダの中心>

カラダの中心とは?
まず、「カラダの中心は臍だ」と云われますが、これは長さ的な物です。
重さを考えた物ではありません。重心とは「体重の中心」ですから、「人間の重心」を考える際には、「カラダの各部位の重量の差」を考慮する必要があります。

つまり、両手よりも両脚の方が重そうですね。
そうすると、「臍より少し下の方に重心があるのかな」と、何となく予想が付きます。

<カラダの中心>

さて、バランスの取れた姿勢、立位での重心の位置を踏まえた上で、「自分のカラダの中心はどこにあるのか?」を発見して行きましょう。

ヒトは、生活に於いて常に動く事が要求されます。日々の生活、或いは運動に於いてカラダが在り、重力の下に生活している場合、動く為のカラダの中心が必要となるのも当然な事です。

最近、カラダの動作や姿勢、意識の大切さを訴える情報が多くなっています。
その情報は、武術を実践されている人々からの発信が多い様です。
特に心技体を要求される武術なればこそ、この様な認識を持つのは必須なのかもしれません。

<カラダの中心>

カラダの中心を上下に貫くラインは、天井から頭の真中のやや後ろ(百会)よりから背骨のやや前方を通り、肛門のやや前の会陰を貫き、足を真っ直ぐ揃えて立った時の内踝を結ぶラインの中点を貫き地に至っています。
このカラダの中心を貫くラインを、日本の武術、伝統芸能では「正中線」と呼んでいます。

このラインは「武術など日本独特な物であるか」と云うと、野球では「体軸」、ゴルフでは「軸」、クラシックバレエなどでは「センター」と呼ばれ、名称こそ違いますが全てのスポーツ動作に通じる物です。
「日常生活動作でも同様である」と云えるでしょう。

<カラダの中心>

<カラダの重心>

カラダの各部位が体重に占める割合
ヒトのカラダで一番の重いのは「体幹」と呼ばれる胴体部分で、全体重の約48%を占めています。
次に重いのが脚です。両脚を足すと体重の約35%になります。
両上肢は約9~10%、頭頸部で約7%となっています。
単純に考えると、股関節には股関節より上部にある頭頚部、体幹、両上肢の重みが掛かる事になります。

<物理学で云うカラダの重心とは?>

物理学では、質量の中心、或いは重力の中心を、「重心」と云います。
立位姿勢では、床面からの重心の高さは「男子成人の場合、身長の56~57%の処にあり、女子成人の場合、55~56%の処にある」とされています。
この表し方は、「比重心高(各人の身長に比べた、それぞれの重心の高さ)」と云います。大体、「腰付近に重心」があると云う事です。

<物理学で云うカラダの重心とは?>

すると、ヒトの重心は骨盤内の仙骨(第二仙椎)のやゝ前方になります。
床から計測すると、成人男性では身長の56%、成人女性では55%の高さにあります。

女性の重心が男性に比べて低いのは、骨盤の形状の違いによる物で、男性の骨盤は細くて深く、女性の骨盤は広くて浅い形状になっているからです。
もちろん個人差もありますし、年齢によっても変わって来ます。成長過程の子供は重心が高くなります。

<重心位置と股関節の関連>

重心の定義と位置がわかった所で、股関節や骨盤の矯正との関連を考えて行きましょう。
ワタシが股関節に痛みを抱えるヒトの矯正をする時、まず姿勢や歩行を観察します。
今「股関節に痛みを抱えるヒト」と書きましたが、これは「膝関節に痛みを抱えるヒト」でも、「障害者のヒト」でも同じです。

矯正には、必ず重心を考えています。

例えば、何らかの原因で重心が右に偏っていたとします。
そうすると、立位では右股関節に通常より負担が掛かります。これは「何となく想像出来る」と思います。

また、その状態で歩行すると、右股関節周囲の筋肉が過剰に働いて、痛みが出現するかもしれません。

<重心位置と股関節の関連>

この様なヒトに施術をするなら、右股関節の痛みに対してストレッチやマッサージなどで直接アプローチするのと同時に、「何故重心が右に偏っているのか?」を考慮する必要があります。
何故なら、右股関節の痛みは悪い姿勢や歩行により出現したもので、重心が右に偏っている事を改善しないと、根本的な解決にはならないからです。

<丹田>

カラダの中心ラインの更に中核として、古来より日本で重要視されて来たのが「丹田」と云う処です。
丹田とは道教の用語であり、「チカラの中心となる処」を指します。

丹田には、額にある上丹田、胸にある中丹田、そして臍下三寸にある下丹田があります。

<丹田>

単純に「丹田」と云った場合は下丹田の事を指し、「関元」に相当し、臍と恥骨稜の間を五寸に位置します。

インドや中国に比べ、日本では座禅や正座などの“座る文化”の発展と共に、下丹田を「臍下丹田」と云い重要視されて来ました。
「腑に落ちる」「肚を割って話す」「肚に据え兼ねる」「肚に納める」など、カラダのコトバが昔からある様に、日本人は物事を肚で考え捉えています。
この文化は「江戸時代を中心に発展した」と云われています。

すると「肚にチカラを入れる」、または「肚にチカラを込める」と云うリアルな話であれば、おおよそ体幹部の随意筋の用法の話で、腹筋運動の時のチカラの入れ具合を再現すれば良いのか?
しかし、「氣を沈める」と云うのは「チカラを入れる」と云う事とはかなり違う。
何故ならチカラでするのでは無く、意識で沈めるからである。

その意識も、主導的能動的に用いるのでは無く、淡く、待ちのタイミングで用いる。
ここに仕掛けがある。帯脈の円周を外縁に一様に膨脹させる様に開いて、腸骨陵の辺縁が膨らむのを目安にする。

現在もこの丹田を活用しているのは、武術、或いはヨーガなどの呼吸法を実践されているヒト、禅、日本舞踊、能、三味線、謡など日本の伝統文化の世界です。
これらの世界では、丹田は上達のカギを握る大変重要な存在なのです。

<氣沈丹田>

丹田は「丹の部屋」の意味で、氣の部屋です。臍下三寸(約9㎝)の下丹田は、「臍下丹田(せいかたんでん)」、「気海丹田(きかいたんでん)」などとも呼ばれ、「氣沈丹田(きちんたんでん)」とは字の如く、「氣を丹田に沈める」と意味し、つまり「氣の部屋に氣を落とす」と云う事になります。

<丹とは?>

丹は「オータコイド(Autacoid)」の意味で、丹の原義は「水銀」とされ、「最良のクスリ」の意に転化し、更に「氣の別名」となります。

<丹とは?>

<丹の働き>

働きは二種類あり、「促進の氣」と「抑制の氣」に分類出来ます。
促進の氣は「ホルモン(Hormone)」の意味で、ヒトの体内に於いて、ある決まった器官で合成・分泌され、血液を通して体内を循環し、別の決まった器官でその効果を促進する生理活性物質です。

抑制の氣は「フェロン(Feron)」の意味で、ヒトの体内に於いて、ある決まった器官で合成・分泌され、血液を通して体内を循環し、別の決まった器官でその効果を抑制する生理活性物質です。

氣沈丹田は、日頃丹は部屋に居るべき物で、丹がどこかに行って帰って来ない時、または帰って来て欲しい時に、丹に集合を掛け部屋に戻します。戻ると氣が落ち着く。或いは氣が鎮まるのです。

<丹の働き>

他に、丹は「氣のチカラが蓄積されて赤く輝く状態」を、田は「そのチカラを保管する器」を表します。

<丹田の高さ>

臍の位置に両手の親指の先を着けて、残りの指を自然に合わせて逆三角形を作った時に、人差し指と中指の間に生ずる菱形の地点です。

<丹田の高さ>

<丹田の深さ>

カラダには「百会」から「会陰」まで貫く「中脈」の深さにあります。
「関元」と「命門」の中間が丹田です。女性では、子宮と膀胱の間にあります。
「関元」と「命門」の間で、「中脈」の深さに位置します。

<丹田の深さ>

<解剖学的な丹田>

解剖学的には丹田を見付ける事は出来ません。それは目に見えない氣の物だからです。
丹田は、カラダのちょうど真ん中とされ、左右から見ても真ん中、上中下から見ても正確に真ん中にあるのです。

A.臍と肛門の中間

背筋を伸ばしながら下っ腹にチカラを入れ、お尻の穴をギュ~ッと締めると、その中間点を意識出来ます。その辺りが丹田です。

B.臍から指四本下。5~10㎝「関元」

臍から「恥骨陵」と云う下腹部の骨にぶつかる処まで線を引き、その中心点が「関元」。その奥に丹田があります。

C.丹田は肌の上では無く、腹の奥にあります。臍下3~5㎝。「気海」

「気海丹田」と云う場合、臍下1.5寸に「気海」があり、そこを指しています。

ここも「関元」と同様に、肌の上では無く腹の奥にあります。

「丹田が在る」とされる位置付近に何があるのかを調べる事で、丹田の意識を鍛えるヒントを探してみましょう。

<丹田は筋肉?>

一般的な丹田の説明で多いのは「臍下三寸」と云う記述です。では、解剖学的にはそこに何があるのでしょうか?

臍周りなので、当然腹筋が該当します。腹筋は表層から

腹直筋
外腹斜筋
内腹斜筋
腹横筋

の四層に重なっています。

<丹田は筋肉?>

その腹筋の中でも注目したいのが、腹部の「インナーマッスル」と呼ばれる四番目の腹横筋。
「インナーマッスル」と云うくらいですので、深層部にあるのがわかりますね。腹筋は表層から深層部に向けて重なりながら腹部を守っています。その中でもこの腹横筋は、「自然のコルセット」と呼ばれる程、近年注目されている筋肉。
この丹田付近ではその腹横筋と表層の腹直筋の重なる順番が反転します。
一番表層にある腹直筋が、一番深層部にある腹横筋下部の下に潜り込むラインがちょうど、この「臍から三寸(9㎝くらい)下」のラインです。
ヒトによって個人差はありますが、臍から恥骨の間にある凹みがその目印です。
その辺りを内側に引き込む様にすると、カラダにシャキッとチカラが込もる様な感覚がありませんか?

<大腰筋は上半身と下半身を繋ぐ唯一の筋肉>

もう一つ注目したいのが、体幹部のインナーマッスル大腰筋です。
この筋肉は背骨と太腿の内側を繋ぐ、唯一上半身と下半身を繋ぐ筋肉です。
「脚を持ち上げる時にも活躍する」と云われていますが、最近では「長く引き伸ばされる時にチカラを発揮する」と云う特徴に注目が集まっています。

<大腰筋は上半身と下半身を繋ぐ唯一の筋肉>

お腹を引き込み骨盤を後ろに倒すと、立った状態で膝を緩め、臍を上に向ける様にすると、骨盤が後ろに傾き大腰筋が引き伸ばされます。
これによって「体幹部の安定をもたらす」と云う効果もある様です。
引き伸ばされた大腰筋が、ちょうど丹田の位置に近いのも偶然では無いかもしれませんね。

座る姿勢で居る時間の長い現代人は、どうしても大腰筋が弛んでしまいがち。
立ち上がった時こそ、この「長く引き伸ばされる大腰筋」を感じてみるのも良いかもしれませんね。

よく勘違いされてますが、丹田にチカラを入れる必要はありません。
チカラは、丹田が出来る体勢を取る事で自然と入るものです。(丹田にチカラを入れようとすれば、鳩尾や首など連鎖的にチカラが入ってしまいます。)

以下は実際様々なアスリート、プロ野球の歴史では半世紀前から学ばれてる事です。最近は米国大リーグにも導入されています。

丹田の位置する処は、臍から恥骨結合の間で、臍下三寸、カラダを上下に貫くラインの前方となります。
しかしそこには「丹田」と云う臓器や筋肉は存在しません。でも「丹田」と云う意識的存在がそこにあります。
その中心には小腸が存在し、その奥には、骨盤内蔵器、下肢、卵巣や精巣などの性腺、腎臓などに心臓からの血液を送る腹大動脈や、それらから逆に心臓に血液を送り返す「下大静脈」と云う大血管も存在します。
また、その両側には下半身と上半身を繋ぎ、骨盤のインナーマッスル(深層筋)として重要な腸腰筋が存在します。

<大腰筋は上半身と下半身を繋ぐ唯一の筋肉>

腸腰筋(大腰筋・腸骨筋)は、ヒトの身体運動の中で最も強力な働きを行う股関節と、体幹の中心である胸椎下部・腰椎など脊柱に繋がっています。

最近の研究では、「腸と脳は密接な関わりがある」とされています。脳にあるセロトニンを始めとする神経伝達物質が腸にもほぼ存在している事がわかっていますし、「腸脳ホルモン」と云って腸と脳は血液を介して密接に連絡している事もわかっています。
発生学的に見ても、進化の過程で腸菅から脳が出来た訳ですから、当然と云えば当然なのかもしれません。

<ヒトそれぞれに違う?>

正確な丹田の位置は、ヒトにより違います。
まだまだ謎の多い丹田。書籍などで調べると、それぞれ位置が違います。それもその筈、カラダはヒトそれぞれ。身長や体重だけで無く、頭の大きさ、脚の長さ、骨一つずつの大きさまでバラバラです。

<丹田を意識した事による効用>

A.ココロが乱れず、動揺しない

精神が安定し、物事を大所高所から見る事が出来ます。

B.呼吸が深くなる

特に呼氣が深くなります。呼氣は自律神経の一つ副交感神経が優位な状態であり、精神を落ち着かせ、消化機能などの内蔵機能を活発にさせます。また、丹田の上部に位置する横隔膜の動きが大きくなり(腹式呼吸)、浅い呼吸の時に使う首の前方の筋肉や胸の筋肉の緊張が解れ、肩のチカラも抜けて、肋骨など胸郭の動きも大きく広くなります。その連動で、肩関節などの動きも良くなります。

C.上虚下実となる

腹から下半身が安定してドッシリした状態となり、上半身はチカラが抜け、ベストな自然体の姿勢となります。能楽師はその様な姿勢で立っています。能楽師であった世阿弥が云ったコトバに、「腰、膝は直にし、身はたおやかなるべし」と云う物があり、丹田を作る事により、力強い下半身とシナヤカで柔らかい美しい姿勢が出来るのでしょう。

D.深層筋を活用出来る

Cの様な姿勢を得る事で、無駄な表層筋のチカラを入れる事無く、深層筋を活用して身体運動、動作が出来ます。スポーツ選手に於いては、自分の潜在のチカラを発揮出来る事に繋がります。

<古文献による丹田>

「能の大成者」と云われる世阿弥の父・観阿弥のコトバを記した『風姿花伝』と云う書に、「一切は、陰陽の和する処の境を成就と知るべし」と書かれています。
観阿弥は、「陰陽の和合する境界こそが全ての成就の元である」と云うコトバも残しています。全て陰陽の中庸を求める思想は、東洋哲学の基本であり、大自然の営みにも共通した物です。

白隠禅師は、丹田の位置を「仏心」と例えられ、「お婆さんは、臍から二町下の裏に住んでいる」と云う一句があります。
「主心お婆々はどちらに御座る。気海丹田の裏店借りて、気海丹田はどこらの程ぞ。臍の辻から二町下、常に気海に気を置け、虚空界より長寿の者は、気海丹田に住む心、気海丹田に主心が住めば、四百四病も皆消ゆる。」

貝原益軒の『養生訓』では、「臍の下三寸を『丹田』と云う。『腎臓の動氣』と云われる物はここにある。『難経』と云う医書に、『臍下腎間の動氣は、ヒトのイノチなり。十二経(漢方学のカラダを流れる氣の流れの十二経絡の事)の根本なり』と書かれている。ここはイノチの根本が集合している。氣を養う術は、『常に腰を正しく据えて、真氣を丹田に集め、呼吸を静かにし荒くせず、事をする時は胸中から何度も軽く氣を吐き出して、胸中に氣を集めないで丹田に氣を集めなければならない』。こうすれば氣は上らないし、胸は騒がないでチカラが養われる。とにかくワザを行う者、特に武士はこの法を知らなくてはならない。また道士が氣を養い、僧が座禅するのも、みな真氣を臍の下に集中する方法である。これは、主静(妄 想を去りココロを静かにする)の工夫であって、彼らの秘訣であろう」。と説いています。

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